444人が本棚に入れています
本棚に追加
「あーあ、今頃転入生は副会長イベントの最中なんだろうなー。あー、見たかったなー楽しみにしてたのになー」
書類整理をする白衣を纏う背中に恨みがましい視線を向けながらこれ見よがしに嫌味を吐く。
どうせまともに取り合っては貰えないと分かってはいる。分かってはいるが、言わずにいられないのだ。
「転入生、上手く副会長堕とせたのかなぁ…。気になるなぁ…」
はああ、と憂いの籠った溜め息を態とらしく溢す。
鬱々とし続ける真雪はかれこれ数十分もこの調子だった。
つまり、ギリギリで保たれていた尚の堪忍袋の緒が切れてしまうのも当然と言える。
「いい加減うるせぇ!!」
「つーん」
怒鳴り声など聞こえないとばかりに真雪は顔を逸らし両手で耳を塞ぐ。
それを見た尚は口元をヒクリと引き攣らせながら蟀谷に青筋を浮かべた。我慢の限界だ。
「いい度胸だ。そんなに俺に怒られたいか…」
憤慨しかけた尚をちらりと伺い真雪は拗ねた様に唇を尖らせた。
そこから小さく言葉を絞り出す。
「……だって、本当に楽しみにしてたのに」
急にしおらしくなり目を伏せる真雪に、今度は尚が抑えきれない溜め息を吐く番だった。
徐に座席から立ち上がると俯く真雪に近付く。
「真雪」
最初のコメントを投稿しよう!