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さらりとした髪に掌を差し入れ梳かす様に撫ぜる。尚が真雪を宥める時によくする行動だ。
優しい指使いに伏せていた目を微かに細めながら、その掌の持ち主を上目で伺った。
「…ごめんなさい、尚君」
「お前はもっと自分の体を大事にしろよ」
本当に心配そうに囁く声に、小さく頷く事で返した。
真雪は身体があまり丈夫ではない。それはアルビノという先天性の病気のせいでもあるし、生来の体質のせいでもある。
別名、先天性白皮症と呼ばれるアルビノ。身体的特徴としてはメラニンの欠乏により体毛・皮膚が白く、毛細血管 の透過により瞳孔が赤い。
人によって色素の差はあるが真雪はそれが顕著に表れていた。
メラニンが不足している、という事は紫外線に対する耐性が極めて低いという事である。
つまり日光に短時間でも当たっていると皮膚が赤くなり、最悪皮膚がん発病のリスクもあるのだ。
真雪も紫外線の影響を避ける為に、肌に専用のクリームを塗ったりなるべく肌を隠す服を着たり日傘を差したり、と出来うる限りの対策をしている。
が、それでも全て防ぎきれる訳ではない。こんな良い天気の日は特にだ。
加えて今は亡き麗しの薄幸の母親の遺伝で身体が弱く、生まれつき病にも掛かりやすかった。幼少の頃に比べれば大分ましになったものだが、それでも弱い事には変わりない。
総評して真雪は虚弱体質である。
自身もそれを自覚して普段の生活も気を付けているし、だから尚が分かりにくい過保護になるのも理解できている。
それでも。それでも、転入生と副会長の出合いを見たかった。己を犠牲にしても萌をこの目で見たい、腐男子の悲しい性だ。
心配する尚の手前、実行には移せなかったが。
「(せめて食堂イベントは絶対見よう。でも一人で食堂に行くのはちょっと怖いし、尚君をどうやって連れて行こうかな…)」
大人しくはなったけれども未練たらたらに窓の外を眺め何か思案する姿に、尚は静かになったなら良いと書類整理に戻った。
「(どうせまたくだらない事でも考えてんだろうな)」
その予想は見事当たる。
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