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ぼやけた視界の端で風に揺れる白いカーテン、その隙間から覗く空は赤い。
はっきりしない意識の中で、陽の沈みかけた空に群れる烏の鳴き声が何処か遠くに聞こえる。
「起きたか」
近距離でかけられた声にまだ完全には開ききらない目をゆるゆると向けた途端、視界は眩しい金で埋め尽くされた。
此方を見下ろす金の持ち主に微笑むと、優しい手付きでベットに散らばる髪を梳かれる。
「…尚君の金髪、寝起きには辛いね」
「そうかよ。あと尚“先生”な」
最後に一撫でして離れる大きな手を目で追いながら、横倒していた上体を起こす。
一度軽く伸びをして床に足をつけたところで、ふと頭上から視線を感じた。
夕焼けに照らされた人影を見上げると普段にない何処と無く躊躇った様子で、そんな態度を珍しく思い首を傾げる。
「どうしたの?」
「…、真雪」
「うん」
綺麗に染め上げた金色の髪を掻き揚げ諦めた様にゆっくりと溜め息を落とす、そのどこか艶かしい気怠げな仕草は彼に良く似合う。
ぼんやりと未だ覚醒しきらない頭の隅でそんな事を思っていた。
しかし唸る様に吐き出された次の台詞で、一時思考は停止する。
「……明日、転入生が来るそうだ」
苦々しい顔で告げられたそれを明確に理解した直後、じわじわと大きな歓喜が波となって押し寄せてきた。
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