【9】半分の嘘と幸宏の真実

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声出すだけで響くんだよ。 芋虫のように縮こまりたくてもままならず、幸宏はもがいた。 「留守!」 出す声は力がないものになる。 再度三回、がしゃがしゃと引き戸は音を立てた。 応答しないでおいたら、さらに三回。 もう、しつこいなあ、ガラスが割れたらどうしてくれんのさ。 仰向けになった身体を左側を下にして何とか横に向け、畳を何度もかいて身を起こす。 肩と腕を庇いながら、しかもまだ怪我した状況に慣れてない。 「いいから勝手に入ってこいよ」 ううう、と情けなく呻き、広くはない室内を横切り、玄関へ向かった。 「しつこい!」 三和土には放り込まれた新聞が数日分そのままになっている。 「留守だって言ってるだろう!」 つま先で引き戸の桟に足をかけて開けた先には、慎はいなかった。 代わりに立っていたのは。 胸に風呂敷包みを抱え持つ幸子だった。
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