【9】半分の嘘と幸宏の真実

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◇ ◇ ◇ 「怪我の具合はどう?」 流した涙の数が多い分だけ、昂ぶった心は平常を取り戻すのも早い。 案内された部屋で、幸子は両手の甲で頬をこすりつつ言う。 「ご覧の通り」 「鉄棒から落ちたんですって?」 「そう。それを誰から」 「柊山先生から」 「小父さんが?」 「ええ。今日、学校で伺って、しばらく出勤できないって」 「その通りなんだけど、何故、学校へ?」 「先生に紹介状をお願いしたくて」 「紹介状?」 「ええ。……今、おじさんって言ってたけど」 「うん、伯父貴の縁で子供の頃から懇意にしてもらってたんだ。長年の知り合いってところかな。で、なんで紹介状?」 「お掃除は?」 「は?」 「お洗濯はたまってない? ご飯はどう?」 「どちらも何とか」 「うそでしょ」 幸子は断言する。 「歩くのも痛そうなのに、お米研いだり、箒使ったりできるわけないでしょ。まず、お洗濯から片付けるわね」 「いい、やらなくて、いい!」 止めようとして立ち上がり、幸宏は肩の鈍痛に呻いた。
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