第1章

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「ただいま」 オレは自宅の玄関を開けると、 靴を脱ぎながらそう声を出した。 そうすると ミユキの足音が近づいてきて ひょっこりミユキが顔を出す。 「おかえり」 ミユキの少し紅潮した顔が、可愛かった。 久しぶりのこのシチュエーションに照れてるんだな。 新婚みたいで。 オレも久しぶりのミユキのお出迎えに なんだかほっこりした。 靴を脱ぎ終えると、目の前に立つミユキを 両腕で抱きしめる。 「く……苦しいよ、リューマ。私、お腹すいた。早く夕飯食べよう?」 ミユキがオレの顔を見上げて 戸惑いながらそう言った。 ミユキのオデコに唇を押し当てて キスを落とす。 ミユキが黙って照れてるのを見て なんだかニヤニヤしながら オレたちはダイニングに入った。 「リューマ、口元緩みすぎて気持ち悪い」 「嬉しいんだよ。ミユキがメシ作ってくれたから」 「夫婦なんだから、当然の事でしょ」 「ふ……。そうだよ。夫婦なんだから当然だよ。もう、それを、簡単に壊そうとするなよ、ミユキ?」 「…………」 ミユキは黙り込んで、キッチンに立った。 そして食卓にチキンライスとロールキャベツが並べられた。 「うまそう」 オレはダイニングチェアを引いて腰かける。 ミユキも、椅子に座って オレたちは手を合わせ、「いただきます」と声を揃えた。 好物のロールキャベツは やっぱり美味しかった。 今日のは格別に大きくてジューシーに感じた。 「うまいよ、ミユキ」 「そんなに特別に作ってないよ?」 「ミユキのロールキャベツはサイコー」 「ふふ……。そういえば、リューマってロールキャベツ男子だよね」 「ロールキャベツ男子?ナニソレ?」 「草食に見えて実は中身は肉汁たっぷりな肉食なの。回りはキャベツで包んであるから、見た目は草食なんだよ」 「なんだそれ。ウケる。」 オレはミユキの話に笑いながら ロールキャベツを、数分で間食した。
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