第1章

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「オレ、ミユキに対しては肉食丸出しだけどね」 ニヤリと笑ったのをミユキはスルーして 「おかわりするでしょ?」 と言いながら オレの器を手に取って、また大粒のロールキャベツを2つよそった。 そしてまた腰かけると、頬杖をつきながら溜め息をついた。 「……壊そうとするなよって言うけど、壊そうとしたのはリューマの方なんだからね」 とっくに終わったと思ったさっきの話を ミユキは頬を膨らませて 反論してきた。 ミユキの険しくなった顔を見て やば……。 と不穏な空気を感じながら おかわりに盛ってもらったロールキャベツにカブリつく。 「あぢっ!」 コントのようにオーバーリアクションをしてしまったオレを見たミユキは 冷ややかに鼻で笑いながら、 冷たい水をグラスに入れてオレの目の前に置いた。 「里奈さんの香水を匂わせて朝帰りして、仕舞いにはキスマークもつけてきて、夫婦辞めようって決断するのもしょうがないと思うけど?」 ミユキは当時の感情を思い出したのか、 うっすら涙を瞳に浮かべた。 オレって……。 久しぶりのミユキとの食事が オレの些細な一言で台無しになろうとしている。 「ごめん……」 オレは少し項垂れ気味に謝った。 そしてミユキはまた残酷な一言を浴びせる。 「今はこうしているけど、またシェアハウスに戻るつもりだから。 私、リューマのした事、まだ許してないからね」 ミユキは険しい顔のままそっぽを向いて そう告げた。 ミユキの傷は…… 相当根深かった……。
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