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小栗の質問に私は応えるのを渋った。
キスさえもしてない。
けれどそんなことを言えば
過去の小栗との関係を引きずってるようにも思われそうだ。
今も忘れられなくて、
この空間に心臓がはち切れそうなほど
ドキドキしてるということも、彼に知られてしまいそう。
「いるんだな」
「な、ないわよ。キスさえないわよ」
悩んでいる間に確定されそうで、
つい、小栗の言葉に真っ向から否定してしまった。
言った後、やっぱり後悔してしまう。
今もまだ小栗が好きだよ。
そんな言葉を言っても、私たちの恋は再び始まらないのに。
ベッドの上で空を見上げていたはずの彼が私の肩を引っ張った。
身体をスプリングが受け止める。
なにするの?と文句をつけようと彼へと顔を向けると、
悪戯っぽくにやりと赤らんだ顔で笑った。
「キスしよっか?」
唐突な言葉が、私の耳元へと届き、狡い唇を盗み見る。
途端に過去の記憶がよみがえった。
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