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「キス、しようよ」
再度、煮え切らない私に彼は疑問符を投げかけた。
「それって、キスフレになれってこと?」
私の言葉にコクリと頷く。
「キスフレには...ならない」
私が放った言葉に、彼は「だよな」といって背を向けた。
その背中は冷たく拒絶の色がある。
キスしたら、きっと離れたがい感情が産まれていた気がした。
距離で苦しんだ日々に逆戻りしていた。
彼に逢いたくてもどかしい日々。
それは、キスフレであっても変わらない。
キスはキス。恋は恋だ。
きっと、もう、彼と恋をすることはないんだ。
確信にも似た感情を抱いたまま、
「さよなら」のセリフだけを残し、
かつてのキスフレだった彼が横たわるホテルを出た。
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