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抱きしめてもらえば、縋ってしまえばいい。
それをわかってるけれど、出来ないのは、
この人を傷つけることを知ってるから。
私にとっての成宮さんは、
傷つけたくない人に、もうなっている。
「ごめんなさい。
私、成宮さんとは付き合えません。
私の中には、まだ彼がいるから」
「そう、やっぱり小栗くんなんだね」
謝る私を、彼は納得したように頷き、
ただ優しい瞳で見つめ続けていた。
風が窓を揺らす音が止んだ時、彼はぽつりと言葉を洩らした。
「彼が、リヨンから君を迎えにきた夜。
彼と飛行場で話をしたんだ」
「小栗と?」
「彼に、佐藤さんのそばにいて欲しいって言われたよ
君をリヨンへと連れていくことはできない。
リヨンに来れば、きっと君は苦しむだろうからって。
だから、君を守ってほしいと告げられた」
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