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翌朝、結婚式会場のあるホテルのスイートルームで
杉田君を引っ張り出した私は、
愕然と肩を落とした。
「ふああああ。俺寝てねえの、またあとでね」
大きな欠伸をした後、突然の来訪者をもてなしもせずに、
扉を閉めようとする。
薄いスリッパを引きずる素足に飛びつく寸前扉が閉まった。
何度もベルを鳴らしてみたが彼は出ては来ない。
小栗のワスレモノではない。
私との別れの理由で、
彼は隠していることがある。
語っていないことがある。
私たちの別れの理由を、知らない限り前には進めない気がした。
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