キスフレ2nd kiss Vol.28

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★ パールデュー駅からトラムに乗り換えた。 真っ白なフォルムで細長いつくりだったが、 東京の路面電車の真四角さとは異なり、 先が丸みを帯びた新幹線のようなころんとした顔をしている。 窓が大きく市内の様子が良く眺められ、 乗っている人が少ないというのもあるからだろうか閉塞感がない。 ルイ14世が騎馬にのった銅像が視界に入ってきた。 真っ赤な赤土の絨毯を敷いたベルクール広場前を通過する。 ようやくリヨンの街並みを観ることが出来て 安堵のため息をついた。 スーツケースを脇に寄せ、シートに腰かけた。 低い建物のせいか、空が近くに感じられる。 ようやく目的地近くの駅へと降り立った。 この街は、いつも甘い香りが漂っている。 春を迎えたリヨンのマルシェは 甘酸っぱいベリーたちの果実のかおりと、 色とりどりの花の香りでむせ返っていた。 ごつごつとした石畳みの緩やかな坂を ヒールの先を石畳を繋ぐ隙間に押し込まないように 気をつけながら登った。 坂の上に、私が求めている場所がある。 黒のベロア帽を被った少年少女たちが、 路面に止められたワゴンの前で列を成している。 ワゴンの店主がクロワッサンの間に チョコレートのパテをリズミカルに塗りナッツを振りかけたあと、 パラフィン紙でくるくると巻いていった。 それを受け取った子供たちが、 口元をクロワッサンのカスと、 チョコレートだらけにして通りを歩いていく。 つい先ほど下校時間になったばかりなのだろうか、列は増える一方だ。
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