638人が本棚に入れています
本棚に追加
「小栗の忘れ物を届けに行きたいんだけど、
今小栗ってどこにいるのかな?」
「ええ?なに?聞こえない」
ノイズ音と、時折無音が繰り返された。
「だからーリヨンの小栗の住所を、
教えて欲しいんだけど。知ってる?」
「はい?声聞こえないけど~?もしもーし!!」
無音になった後電話が切れた。
リダイヤルしたが、
彼の電話は電源がOFFへと切り替わっていた。
頼みの綱が切れた。
とうとう、リヨンまで来た意味がなくなるのだろうか?
手帳の中から、
過去にかけたことのある、
GE社のオフィスの番号を探す私に、「何してるの?」
と、尋ねる声が響いた。
声だけで戦慄する。タイミングはやはり最悪。
私の悪運が最強だと実感する瞬間だ。
「ようこそ、リヨンへ」
最初のコメントを投稿しよう!