キスフレ2nd kiss Vol.28

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「旅行?強がっちゃって。 フロントに小栗君の今の居場所を尋ねてたくせに。 別れたって噂、本当だったんだな。 付き合ってる彼女なら、彼の連絡先を知らないはずないもんね。 本当は、旅行じゃなくて、 小栗君に逢いに来たんだろ?」 彼の質問に答えずに石畳が続く通りを眺めた。 色とりどりのナップザックを肩にかけた学生が 楽しげに歩いてゆくなかに、彼の姿を捜す。 阿部さんと同じマンションに住んでいるのなら、 彼と同じ行動範囲にいるかもしれない。 通りに小栗らしき影を探してみたが、そうそう運はめぐっては来ないようだ。 「この通りの先にあるブション(レストラン)は、僕の行きつけなんだ。 そこの手長エビのラングスティーヌソースがかかったクネル (川マスなどの魚のすり身にソースとチーズをかけて焼いたグラタンのようなリヨンの郷土料理)が好物でね。 時折、店に足を運ぶんだ。 そこに、丁度、 スーツケースを引き摺る君の姿が、店の窓から見えた」 「店からここまでつけてきたの?」
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