キスフレ2nd kiss Vol.28

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ごつごつとしたガラスのカッティングのせいか、 十字架のマークの影は、光の反射の再現をするかのように、 濃淡を忠実に真っ白な大理石のフロアの上に描き出している。 ここが、地上から何十メートルも 上にある場所で在ることを忘れていたのなら、 フィルヴィエールの教会の中にいるのかと、 思うほどに、 幻想的な空間が広がっている。 景色の素晴らしさに感動さえ覚えていた私を 不思議そうに阿部さんは眺めた後、 エレベーターホールから、左右に広がる廊下を、 彼は右に曲がると、私を即した。 慣れてしまうのは、 エレベーターの速度だけじゃなくて、 普段目に出来ないような素晴らしい景色についてもなのだろう。 感動を憶えた景色が日常になってしまうのは、 なんだか寂しい気もする。
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