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ごつごつとしたガラスのカッティングのせいか、
十字架のマークの影は、光の反射の再現をするかのように、
濃淡を忠実に真っ白な大理石のフロアの上に描き出している。
ここが、地上から何十メートルも
上にある場所で在ることを忘れていたのなら、
フィルヴィエールの教会の中にいるのかと、
思うほどに、
幻想的な空間が広がっている。
景色の素晴らしさに感動さえ覚えていた私を
不思議そうに阿部さんは眺めた後、
エレベーターホールから、左右に広がる廊下を、
彼は右に曲がると、私を即した。
慣れてしまうのは、
エレベーターの速度だけじゃなくて、
普段目に出来ないような素晴らしい景色についてもなのだろう。
感動を憶えた景色が日常になってしまうのは、
なんだか寂しい気もする。
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