キスフレ2nd kiss Vol.29

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「なんだか凄く素敵な鳥かごの中に押し込まれたみたいね。 自由なように見えて自由ではない。 飛びたくても羽が毟られて飛べない鳥みたいで、 少し窮屈に思える気がする」 コンクリートの塀の奥に広がっているこの場所は、 拘束のない自由な場所だが、全てが、GE社に握られている。 「その通りかもね。 プライベートはないが、 その分、僕らは強い信頼関係で結ばれるんだ。 それはすなわち、いいものが出来上がるってことに繋がってくる」 強い信頼関係。本当にそうだろうか、 腹の中が読めない相手と衣食住を共にしていたとして、 信頼関係を築けるほど、人と人はそう単純ではない。 プライベートにいつでも足を踏み入れられるというのは、 ある種の緊張感を常に産んでいるわけで、 私は他人とそんな場所で、おちおち寝起きできない。 相手が信用できなければ、 此処での生活は監禁状態と何ら変わらない苦痛を伴うだろう。 小栗は今どういう気持ちで彼と仕事をしているのだろうか。 「その目、なんだか狡いぐらいにセクシーだね」 急に肩をつかまれ、考えを止める。 ここに逃げ場はない。 「やめて!」 ふっと顔を近づける彼から逃げようとすると、 何かに気づいた様子で、玄関へと視線を彼は向けた。 その口元が、何か楽しいことが起こる前触れに気づいたかのように、 微かに緩んだ気がした。 「そうこう話をしていたら主役の登場だ」
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