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「なんだか凄く素敵な鳥かごの中に押し込まれたみたいね。
自由なように見えて自由ではない。
飛びたくても羽が毟られて飛べない鳥みたいで、
少し窮屈に思える気がする」
コンクリートの塀の奥に広がっているこの場所は、
拘束のない自由な場所だが、全てが、GE社に握られている。
「その通りかもね。
プライベートはないが、
その分、僕らは強い信頼関係で結ばれるんだ。
それはすなわち、いいものが出来上がるってことに繋がってくる」
強い信頼関係。本当にそうだろうか、
腹の中が読めない相手と衣食住を共にしていたとして、
信頼関係を築けるほど、人と人はそう単純ではない。
プライベートにいつでも足を踏み入れられるというのは、
ある種の緊張感を常に産んでいるわけで、
私は他人とそんな場所で、おちおち寝起きできない。
相手が信用できなければ、
此処での生活は監禁状態と何ら変わらない苦痛を伴うだろう。
小栗は今どういう気持ちで彼と仕事をしているのだろうか。
「その目、なんだか狡いぐらいにセクシーだね」
急に肩をつかまれ、考えを止める。
ここに逃げ場はない。
「やめて!」
ふっと顔を近づける彼から逃げようとすると、
何かに気づいた様子で、玄関へと視線を彼は向けた。
その口元が、何か楽しいことが起こる前触れに気づいたかのように、
微かに緩んだ気がした。
「そうこう話をしていたら主役の登場だ」
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