キスフレ2nd kiss Vol.29

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青とオレンジの光に包まれていたエレベーターホールは、 青白い影を落とす薄暗い場所へと変わっていた。 夜の闇のなかに浮かぶ十字架が私の胸の真ん中に刻まれている。 リヨンに何を求めにきたのか、ようやく分かった。 別れを切り出されてから今までずっと、彼を忘れられなかったのは、 彼が今もなお、私を愛しているからだと心の何処かで信じていたからだ。 あの日の別れは、きっと離れなくてはならない理由が別にある。 今も私を想ってくれている。 それは、自分勝手な幻だった。 もう、彼と恋をしていたころには、戻れないのだ。 十字架が私を通り過ぎた後、エレベーターのボタンを押した。 点灯しないエレベーターは、いつまでも静かなままだ。
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