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………… 自宅マンションの前まで嵐君に送ってもらい、食料品の入った袋を手渡される。パック詰めのごはんやお粥などの陰で、桃の缶詰がささやかに自己主張していた。 「……ありがとう」 「ほんとに、ちゃんと休んでね? あと、ごはんも忘れず食べるんだよ?」 「うん。分かりました」 それと、と嵐君が去り際に付け足した。 「もし、具合が悪くなかったら。明日の夜零時十五分から、ラジオを聞いてほしいんだけど」 「ラジオ? 何の?」 「俺が前に、PVで出させてもらったバンドがやってる、ラジオ番組。そこにゲスト出演させてもらうことになってる」 「そうなんだ?」 「詳しい情報は、後でラインするから」 「分かった。待ってる」 嵐君の後ろ姿が見えなくなるまで、僕はマンションの入口に立ち、彼を見送った。雨粒は見当たらないのに、どこからともなく雨の匂いがした。
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