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いのりさん、と嵐君が言う。
長年見てきた無邪気な少年の顔ではなく。大人の、男のひとの顔。
「俺、言ったよね。頼って、って」
純粋な怒りが、声に表れている。
「どうして、頼ってくれなかったの?」
--信用してないんだな。
青司さんに言われたことが脳裏をよぎる。そうじゃなくて、ただ、僕は……。
「うわ、ごめん。泣かないで」
あたふたする嵐君に申し訳なく思いながらも。
感情が溢れ出したみたいに零れ落ちていく涙を、止めることができなかった。
「……っ、嫌われたく、なくて……」
必死で絞り出した言葉は、涙のせいでひどく幼い響きになってしまった。
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