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嵐君が、僕の背を撫でる。その動きに合わせて呼吸すると、少しずつ気持ちが落ち着いていくのが分かった。
「俺も、青司君も。いのりさんのこと、嫌いになったりしないよ」
「でも……っ、僕、が……」
「いのりさんが? どうしたの」
嗚咽が収まるのを待って、僕は黒川さんとのことを嵐君に打ち明け始めた。
嵐君とホテルに入るところを黒川さんに撮られていたこと。
それを機に、様々な要求をされるようになったこと。
一昨日、合コンの後に襲われかけたこと。
嵐君は黙って耳を傾けてくれていたが、襲われかけたというくだりで、眉根を寄せた。
こんなにも露骨に嫌悪感を表す彼は、狩野氏といるとき以来だった。
「触られた、だけ? 本当に?」
「う、うん……」
「よかった。じゃなかったら、俺、そいつに何してたか分かんないよ」
彼とよく似た王様の顔で、嵐君は微笑んだ。
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