165人が本棚に入れています
本棚に追加
「状況は分かったから。もういのりさんは、そいつに何言われても従わないこと。絶対、だよ?」
足元をうろうろしていた雪を抱き上げ、嵐君が念を押す。
「……分かった」
「俺も、青司君も。いのりさんみたいに純粋でも不器用でもないから。心配しなくていいんだよ」
何それ。
と僕は笑ったはずだった。
「え、ちょっと、いのりさん……っ?」
安心した途端に身体の芯が揺らぎ、僕の視界は暗転した。まるで、深い夜の底に落ちていくみたいに。
「いのりさん……!」
嵐君の声が、ひどく遠くに聞こえた。
最初のコメントを投稿しよう!