波乱のグランピング

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「あれ?美姫ちゃん?」 そう声をかけられて顔をあげる。 そこには澄人くんが立っていた。 「澄人くん?」 どうして彼がここにいるんだろうか。 ここは学校じゃない。 驚いていると澄人くんは嬉しそうに笑った。 「嬉しいな。夏休みまで美姫ちゃんに会えるなんて」 綺麗な顔で微笑まれるとドキッとしてしまう。 イケメンの笑顔は心臓に悪い。 「美姫ちゃん、なんでここにいるの?」 「えっと……友達と一緒に来てて。私があれ、苦手だから待ってるって言ったの」 咲羅ちゃん達が向かったスライダーを指さすと澄人くんが納得したように頷いた。 「そうだったんだ。俺も友達に誘われてグランピングに来たんだ。夏休みに入ってから美姫ちゃんに会いたいなって思ってたから凄く嬉しいよ」 「そ、そう……」 なんだろう、澄人くんと一緒だと居心地が悪くなる。 小さい時は澄人くんの事を兄のように慕っていたのに。 「あのね、美姫ちゃん。聞いてもいい?」 澄人くんは私の隣に座ると私の顔を心配そうに見た。 「美姫ちゃんの事は学校でよく聞くんだ。『君島刹那の彼女だ』って。君島の事は俺も知ってるし、アイツが学校で人気があるのも知ってる。だからこそ心配なんだ。周りは『罰ゲーム』とか『遊び』とか言ってるし。本当に君島は美姫ちゃんの事を大切にしてる?好きでいるの?」 刹那くんの気持ちは正直私には分からない。 だけど、刹那くんが私を大切にしてくれているのは分かってるつもりだ。 好きでいてくれてるって、毎日のように分からされる。 「……刹那くんは本当に人気があるし、正直私を好きでいてくれるのは奇跡みたいなものだと思ってるの。だけど、私を大事にしてくれてるし、好きでいてくれてるんだなって分かるくらい愛してくれる。だから、刹那くんの気持ちが私から離れていくまで私も刹那くんに答えたいって思うの」 そう言うと澄人くんはため息をついた。 「美姫ちゃん。俺は美姫ちゃんが何度も騙されて泣かされてきたことを知ってる」 「!!」 「小学生の時、クラスの男の子に告白されたけど それが罰ゲームだって聞かされて、最終的には『誰がお前を好きになるか』って酷い事言われて。それでご飯食べられなくなったの覚えてるよ」 小さい時から私はいじめの対象だった。 罰ゲームの的になるのだって日常茶飯事。 澄人くんはその時と今が同じ状況だと言いたいんだろう。 私は手をギュッと握り締めて俯いた。 「今は……違う」 「美姫ちゃん」 「刹那くんは、そんな人じゃない」 そう言い切ると澄人くんが口を開いた。 だけど、澄人くんの言葉は澄人くんの友達の声にかき消された。 「澄人ー、そろそろ戻るぞ」 その声にため息をつくと澄人くんは立ち上がった。 「美姫ちゃんが信じたいのは分かる。でも、俺には君島を信用出来ない理由があるんだ」 「え……」 刹那くんを信用出来ない理由? 一体何か分からなくて嫌な汗が流れる。 「またね、美姫ちゃん」 澄人くんは爽やかに笑うと友達と一緒に去って行った。 ・
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