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「市川くん、今日話せて良かった。友達になってくれてありがとう」
「ううん、僕も話せて良かった」
「また、話そうね」
そう言って私は立ち上がった。
そして刹那くんと一緒に図書室を出た。
隣を歩いているだけなのに、どうしてこんなにドキドキするんだろう。
どれだけ私はこの人を好きなんだろう。
「刹那くん」
「何?」
「どうして友達と帰らなかったの?」
「なんで美姫と一緒に帰っちゃダメなの?」
聞き返されて言葉に詰まる。
ダメってわけじゃない。
私だって一緒に帰りたい。
いつだって隣を歩きたい。
でも私には友達がいなくて、刹那くんには友達がいる。
友達はきっと私と刹那くんが一緒に居る事を良く思っていないから。
きっと刹那くんと一緒に帰りたいと思うから。
私が刹那くんを独占しちゃいけない。
「ダメじゃないけど……。友達だって刹那くんと一緒に帰りたいと思うよ?放課後一緒に行きたい場所とかあるのかもしれないし……」
「美姫以外と行って楽しいの?」
「そりゃ……」
「俺は初めて行く場所も、一回行った場所も、美姫と一緒に行きたい」
「!!」
「ずっと一緒に居たいのは美姫だけ」
そう言われてドキドキしない女の子なんているんだろうか。
私は何も言えなくてそのまま歩いた。
下駄箱に着いて靴を履き替えていると、同じクラスの刹那くんの友達がやって来た。
「あれ?刹那じゃん。帰ったんじゃないの?」
綺麗な女の子がそう言って首を傾げる。
あ……真野さん。
本当に綺麗な人だな。
クールで美人な真野さんは刹那くんから私に目を移した。
「また過保護発動させてんの?」
呆れたようにそう言う真野さんに恐縮する。
ビクッとすると刹那くんが私の隣に立った。
「そう言う言い方すんなよ。美姫が勘違いするだろ」
「あー、ごめん。日比谷さん。私、あんま話すの得意じゃないからさ。怒ってるように見えたらごめん」
「え……?」
「今のは刹那に言ったから。日比谷さんにじゃない」
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