22人が本棚に入れています
本棚に追加
土曜日。
刹那くんと待ち合わせして近くの河原に向かう。
綺麗な桜が並んでいて感動した。
「綺麗……!」
「これだけ並んでると壮観だな」
お花見のピークは過ぎているからか、人は思っていたより少なかった。
それでも私達のように桜を見にやって来ている人達はいて、楽しそうに話していた。
家族連れや恋人同士、友達同士……。
皆、楽しそう。
思わず笑みがこぼれる。
刹那くんは私の手を引いて近くのベンチに座った。
「人、あんま居なくて良かったな」
「うん」
「ゆっくり桜見れる」
「本当だね。写真撮っても人が写らない」
スマホで写真を撮って刹那くんに見せると刹那くんが微笑んだ。
その綺麗な微笑みに少し赤くなる。
そういえば私、彼氏と一緒にお花見しに来てるんだ……。
刹那くんが彼氏って、いまだに実感がない。
どうして私の事を好きになってくれたのかも分からないし、付き合ってくれているのかも分からない。
こうやって考えるのは私の悪い癖だ。
自分にもっと自信がつけばいいのに……。
「美姫」
刹那くんに名前を呼ばれて刹那くんを見る。
刹那くんは桜の花びらを掴んでいた。
「落ちてきたの、キャッチ出来た」
嬉しそうにそう言って笑う刹那くんを、『可愛い』と思わない人物なんてこの世に存在するのだろうか。
私は胸がキュウっと締め付けられるのを感じながら頷いた。
「あ、あのね、刹那くん」
「何?」
「その……お昼、作ってきたんだけど……」
「え?」
驚く刹那くんを見て私は慌てて続けた。
「せ、刹那くんが食べたくないなら食べなくていいから!!あんまり自信ないし、刹那くんに食べてもらえるなんて考えてなかったし……!!」
そう言って俯くと刹那くんに顔をあげられた。
「どうしてそんな事言うわけ?俺が美姫の作ったもの食べないと思う?」
「……っ」
「一緒に食べよう。絶対に残さないから」
なんて幸せなんだろう。
こんな素敵な人が彼氏だなんて、世の中の女の子達に自慢したいくらいだ。
私が可愛くて自分に自信があったら絶対に自慢してた。
・
最初のコメントを投稿しよう!