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いつもと同じように起きて、いつもと同じように学校へ行く準備をする。
刹那くんからの『一緒に行こう』ラインを見なかった事にして、私は家を出た。
すると家の前に刹那くんが立っていた。
思わず固まる私。
刹那くんは得意気に笑うと私に近づいた。
「美姫の事だから、俺と一緒に学校行ったら俺が迷惑だとでも思ってるんでしょ」
「どうして……」
「迷惑じゃないし、俺は美姫と一緒に居たいから一緒に行こうってラインしてる。無視される方が悲しいんだけど」
「ご、ごめん……」
謝ると刹那くんは私の手を取った。
「別にいい。嫌われてないって分かっただけでも嬉しいから」
そう言われて赤くなった。
どうして刹那くんは私をここまで好きでいてくれるんだろう。
私は特別可愛いわけじゃないし、刹那くんにとって面白い話を出来るわけでもない。
一緒に居てもつまらないはずなのに……。
刹那くんと一緒に歩いて学校へ行く。
一緒に登校するの、初めてだ。
今まで刹那くん、遠慮してくれてたから。
「あの、刹那くん」
「どうかした?」
「一緒に学校行けるのは嬉しいんだけど……」
私の目線が繋がれている手に向いている事に気づいた刹那くんは更に指を絡めてきた。
「刹那くん!?」
「離さないから」
「なんで……」
「今までどれだけ我慢してたか、美姫知らないでしょ。せっかく付き合えたのに学校で一緒に居られなくて、正直頭おかしくなりそうだった。しかも同じクラスなのに話せないとか拷問?好きな子とはずっと一緒に居たいって思うの、変?」
そう聞かれて何も答えられない。
私だって一緒に居たい。
だけど……。
周りの目がどんどん気持ち悪くなる。
私と刹那くんが付き合ってる事はもう知られてる。
でも、一部の人は信じていない。
この間の人達みたいに『罰ゲーム』だと思ってる人もいる。
そう思うのも当然だ。
私と刹那くんでは見ている世界が違いすぎる。
ため息をついて教室に入る。
自分の机に向かうと、私の前に誰かが立った。
また、今日もしんどい時間が訪れるのか……。
覚悟して顔を上げると、思っていたような人は立っていなかった。
「真野さん……?」
驚いて目を見開くと真野さんは表情を崩さずに私の顔をジッと見つめた。
「日比谷さん、今日一緒に帰れる?」
「え?」
「実は駅前に新しいカフェが出来たらしくてさ。刹那とか和也の事誘ってもいいけど、あいつらと一緒に行っても何も楽しくないし。やっぱり女の子と一緒に行きたいじゃん」
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