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あ……。
また上履き、なくなった。
下駄箱を開けて呆然とする。
こんな嫌がらせは日常茶飯事。
私が、刹那くんと付き合っているから……。
下駄箱を閉じて事務室へ向かう。
靴下を履いててもやっぱり廊下は冷たい。
刹那くんと出会う前になんとかしないと。
心配かけたくない。
こんな時友達がいたらいいのに……。
極端にコミュ力がない私には当然のことながら友達が一人もいない。
地味だし可愛くないしすぐキョドるし……。
刹那くんは私のどこが良かったんだろう。
ため息をつくといきなり腕を掴まれた。
ビクッとして振り向く。
そこには今まで考えていた人が立っていた。
「刹那くん!?」
こげ茶に近い髪の色。
少しだけたれ目で整った顔立ち。
可愛いのにカッコイイ男の子。
この人が私の彼氏、君島 刹那くん。
なんてカッコイイの……っ!!
「どうしたの?それ」
「え?」
「上履き。なんで履いてないの?」
う……っ。
なんて答えよう……。
この間は『川に落ちたの』なんて苦しい言い訳したし……。
「これ……は……」
「……あのさ、美姫。俺に何か隠してない?」
疑うように顔を見てくる刹那くん。
こうやって真っ直ぐ見つめてくるから、あの日だって告白断れなかったんだ。
そりゃ私も好きだったけど、でも私なんかが付き合える存在じゃないから断ろうと思ってたのに……。
『俺の事、好きって言うまで離さない』
「っ!?」
あの日を思い出して赤くなる。
首を傾げる刹那くん。
私は首を振った。
ダメだ。
何を思い出してるんだ。
グッと腕を軽く引かれて現実に戻される。
そうだ。
今はこの状態をなんとかしないと。
「えっと……」
「美姫。嘘つくな」
グッと顎を掴まれて上を向かされる。
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