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ホームルームが終わっても教室はざわついていた。
自分が行くこととなった席の事について友達と話している内容があちらこちらから聞こえてくる。
「美姫」
刹那くんに呼ばれて振り返る。
刹那くんは嬉しそうに笑った。
「これでいつでも話せるな」
「う、うん」
「そうだ。これ、美姫の好きな猫のキャラでしょ?」
刹那くんがスマホを私に見せる。
画面には私の好きな猫のキャラクターが写っていた。
「にゃ、にゃん太郎!」
「このキャラと駅前のカフェが今度の土曜日からコラボするらしいって聞いてさ。一緒に行かない?」
「いいの?」
「もちろん。美姫の行きたいところならどこへでも連れて行くよ」
なんて甘い彼氏だろう。
本当に私には勿体ない。
頷くと真野さんが口を開いた。
「ねぇ、日比谷さん。私ともライン交換しよ」
「え!?い、いいんですか!?」
「交換したいから言ってるんだよ。いいに決まってる」
スマホをひらひらさせて小首をかしげる真野さん。
本当に美人は何をしても絵になる。
「だったら俺も交換したいな」
「森崎くんまで!!いいんですか!?私、何も面白い事言えませんが……っ」
「面白い事言わなくてもいいよ。別に面白い事言わないと友達になれないなんて決まりないし。それに俺達はもう友達だって思ってるから」
嬉しいお誘いに感激してしまう。
嬉しい。
市川くん以外に友達が出来たなんて。
これは全部、刹那くんのおかげだ。
「そういえばもうすぐ5月祭だね」
5月祭はこの学校の行事で、文化祭のようなもの。
文化祭はまた別であるんだけど、この学校では5月にも同じような行事を行うのだ。
沢山の出店とかがあって、この近辺では有名なお祭り。
一般のお客さんとか他校の生徒とかがやって来る。
森崎くんの言葉に嫌そうに真野さんが眉をひそめた。
「またあの行事?無駄に追いかけまわされるし、なんか知らない人から呼び出しくらうから嫌なんだけど」
び、美人は悩み事が異次元過ぎて凄い!!
私なんて去年は一人でお店まわってたし、クラスの出し物もハブられてたから何も楽しい思い出なかったけど……。
そう考えると私の人生って悲しいな。
「藍那、散々だったもんね」
「和也だってそうでしょ?女の子から騒がれてたじゃん」
「害が無い子には優しくしてたよ」
「ブラック和也降臨」
「藍那も、もっと上手に立ち回ればいいのに。ね?刹那」
突然話を振られて嫌そうに刹那くんが顔を歪めた。
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