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「俺も藍那と一緒で女子から逃げてた一人なんだけど」
「そうだっけ?覚えてないや」
森崎くんの言葉にため息をつく刹那くん。
それから私を見て優しく微笑んだ。
「まぁ、俺にとってもあの行事は最悪なものだけど、同時に美姫と出会わせてくれた行事でもあるから」
「え?」
そうだっただろうか。
首を傾げると刹那くんは私の頭を撫でた。
「覚えてなくて当然だと思う。あの時が美姫と初めて会った日だから」
「刹那くんと、初めて会った……?」
思い出そうとして悩む。
そう言えば去年のあの日、沢山の女の子達に追いかけられている人を助けた気が……。
「困ってる俺の事、美姫は助けてくれたんだよ。『私は貴方を知りませんが、困っているなら助けます』って。あの時の美姫、超かっこよかった。一瞬で惚れたもん」
「そうなの!?」
「そうだよ。あの日から俺超頑張って美姫にアピールしまくったんだから。その結果、今俺の彼女になってくれたから」
なんで私に話しかけるんだろうって不思議ではあったけど……。
私が刹那くんを助けていたなんて。
自分でも驚いていると真野さんが口を開いた。
「今年は何やらされるんだろうね。あれって先生がくじ引いたやつを強制的にやらされるってパターンだったじゃん。そのせいで去年は写真館っていう謎の店したんだよね」
「知らない奴と何枚も写真撮った記憶ある……。思い出すだけで吐きそう」
「刹那も藍那も大げさだなー。俺は立ってるだけでお金が入ってくるから楽しかったけど」
森崎くんはホストとかに向いているんじゃないか……。
そう思って森崎くんを見てしまう。
すると森崎くんにニコッとされた。
「私も、行けばよかったな……。去年……」
そう小さくつぶやくと真野さんがスマホを持って私の隣に並んだ。
「写真ならいくらでも今撮ってあげる。これからだってずっと、何枚も」
その言葉と同時にカメラがシャッター音をたてた。
「え……?」
「だから寂しそうにしないで。あの日撮るよりも、これから撮る方が絶対に楽しい写真になるから」
「真野さん……」
嬉しくて泣きそうになる。
優しいな……。
こんな世界があるだなんて知らなかった。
教室にいても一人じゃない。
誰かとこうして話している。
夢に見ていた光景だ。
刹那くんが居なければ、叶わなかった光景だ。
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