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授業が始まれば少しは気分が楽になる。
いじめられる心配が全くないから。
一番心配なのは体育の時と昼休み。
私が刹那くんと離れた瞬間に嫌な事言われたり、痛い事されたりするから。
窓の外を見ると、まだ綺麗に桜が咲いていた。
新しい一年の子がまっさらな体操服を着て駆け回っている。
そういえば刹那くん、一年の女の子にも騒がれてたな。
本人はあんまり気にしてなかったけど。
次の土曜日にでも近所の河原で遅めのお花見しようかな。
もう人もそんなにいないだろうし。
そう考えて少し楽しみになる。
こうやって楽しみを見つけていかないと、息苦しくて泣きそうになるから。
昼休み。
私は人が誰もいないことを確認して、一人で校舎裏でお弁当を広げた。
今日は上手く人を巻けた!
追いかけようとして来る人はたくさんいる。
暇なのかなって思うくらい。
今日はちゃんとお弁当食べられる。
病院に勤めている両親は帰りが遅く、私がご飯を作ったりしている。
当然自分のお弁当も自分で作る。
料理が得意になってしまった。
作るのは嫌いじゃないしいいんだけど。
「今日は上手く猫の形におにぎり握れたし、ちょっと楽しみにしてたんだよね」
そう言ってお弁当を食べようとすると、後ろから抱き着かれた。
「っ!?」
驚いて声も出ない。
だ、誰……?
小さく震えると後ろの人物が口を開いた。
「見つけた」
その声は刹那くんのものだった。
「刹那……くん……?」
「やっと美姫と二人きりになれた」
そう言ってそのままの格好で私のお弁当を見る。
「うまそう」
「あ……えっと……」
「今日も美姫が作ったの?」
「う、うん……」
「相変わらず猫好きだな、可愛い」
「上手く……出来たの……」
「猫もだけど、戸惑ってる美姫が可愛いって意味なんだけど」
「!?」
「一緒に食べていい?」
「お友達…は……?」
「俺の事探すなって言ってきた。同じクラスなのに美姫と一緒に居られないし、しかも話せないなんて拷問。ほとんどあいつらのせい」
「仕方ないと思うけど……」
「ふーん、そんな意地悪言うんだ」
刹那くんは私をギュッと抱きしめたまま私の頬にキスをした。
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