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二人で並んで椅子に座る。
こうして隣同士で本を読める日が来るなんて夢みたいだ。
それに、初めての友達。
勇気出して良かった。
嬉しくてニヤニヤが止まらない。
お互いの好きな本の話が出来るなんて、こんなにも嬉しいことなんだ。
「この間読んだ本、面白かったよ」
「あ、この先生僕も好き」
「風景が浮かびやすくて読みやすいよね。綺麗な表現するし」
「その場に一緒にいるみたいな感覚になれるよね」
「うん」
笑顔で頷くと後ろから誰かに抱き着かれてビクッとした。
え、え?
戸惑っていると市川くんが驚いたように私の後ろの人物を見た。
「刹那くん?」
「刹那くん!?」
私が大きな声を出すと刹那くんは私の耳元に顔を近づけた。
「ダメでしょ、美姫。図書室で大きな声出しちゃ」
「……っ!!」
耳元でそんな甘く言われたら赤くなって動けなくなる。
刹那くんの腕の中で小さく震えていると刹那くんは市川くんに話しかけた。
「勇吹は美姫が俺の彼女って事知ってるし、俺に対して無害なのは知ってる」
「えっと……」
「多分友達になったんだろうなって見れば分かる」
「刹那くん?」
「でも、俺よりも楽しそうに話してる彼女見て嫉妬しない彼氏はいないと思うんだけど、勇吹どう思う?」
そう聞かれて困っている市川くん。
刹那くんはため息をつくと私を離して市川くんとは違う方の隣に座った。
「美姫が教室から出て行って追いかけようとしたら周りの奴らに捕まって、ようやく抜け出せたと思ってここに来たら勇吹と楽しそうに話してるし。勇吹は俺の幼馴染だし信頼できるからまだ許せるけど、それでも嫉妬するわ」
「ご、ごめんなさい」
「美姫に怒ってるわけでも勇吹に怒ってるわけでもない。俺が勝手に嫉妬して怒ってるだけだから気にしないで」
そうは言われても気にする。
市川くんと顔を見合わせると市川くんは困ったように笑った。
「日比谷さんのこと、僕に自慢するくらい刹那くんは好きだから。ちょっと拗ねてるんだと思うよ」
市川くんの言葉に刹那くんを見ると刹那くんは本当に拗ねていた。
「だって、俺と話すときは美姫たまに困ったようにするのに、勇吹と話してるときは楽しそうだったし」
「日比谷さんと僕はその……刹那くんの見ている世界とは違う世界を見てるから、おのずと共感できるっていうか……」
「俺が見てる世界は、お前らと何も変わらない」
「……違うんだよ、刹那くん」
悲しそうにそう言って市川くんは俯いた。
友達がいて、毎日誰かと話せる世界を知っている刹那くん。
だけど私達はその世界を知らない。
きっと楽しいんだろうな。
どんな世界なんだろう。
小説や漫画で見たような世界が広がってるんだろうな。
羨ましいな。
そう感じながら私は刹那くんを見た。
「刹那くん。今日、一緒に帰れる?」
そう聞くと刹那くんは私を見てふんわり笑った。
「当然」
私も笑い返すと、そのまま市川くんを振り向いた。
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