第1章 白い霧の中

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「僕は、君に届け物があって君にあいにきたんだ。」というと、白蛇は、口の中から丸い玉を吐き出し舌の上に載せていた。 私はびっくりしたが、その玉の美しさに驚きを隠せなかった。 その玉は何もかも映し出している様に見えたのだ。 白蛇は、続けて私にこう言ったのだ。 「これは、あなたの心の中にある玉でした。以前私があなたの中からこの玉を取り出して、預かっていたものなのです。 やっと時が来てあなたに返す時が来ました。この玉は長年私の中にいて清められています。きっとあなたのお役に立つ事でしょう」と言う。 白蛇を見つめながらふと昔の記憶を手繰り寄せながら、この白蛇との出会いがあったのかどうか回想してみることにしたが、全く覚えがないのである。 私の考えていることが分かっているかのように、白蛇は、私にむかって、 「あなたは私との記憶がないと思っていらっしゃるのではないですか、ただ単にあなたが忘れているだけなのですよ。心の奥底にしまっているだけなんですよ。 さあこの玉を持って行きなさい。
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