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「2人で大丈夫かい?先生」
木村が大島を指差して答える。
「俺はともかく、こいつが居れば大丈夫だろ」
大島は大学時代総合格闘技をやっていて、プロの団体から誘われており、本人もその気だった。
卒業を間近にしたある夜、友人等と飲みに行き、そこで酒に酔った米兵のグループに友人達が絡まれる、助けに入った結果。
米兵2人を殴り殺してしまい、目撃者の証言から正当防衛が認められたが、人殺しに成った事で大島は格闘技を止め、行き場を無くし途方に暮れていた所を、木村に声を掛けられたのである。
「あ、そうだね」
木村と大島が懐中電灯を手に正門に行く途中、念の為に警察に電話を歩きながら掛けていた木村が、何かを踏んづけて転けた。
「何だこれ?」
踏んづけたのは陸上部が使用している槍投げの槍で、生徒が自主練をしたあと仕舞い忘れた物であろうか。
「イテテ、これ置き忘れたのお前の部の奴だな?」
「あ!?すいません先輩」
舌打ちしながら手に槍を持ち、警察に電話を掛け直したが、数十回呼び出し音が成っても電話が取られる気配が無い。
学園の展望の良い高台から見える市内の方向では、十数台のパトカーや救急車のサイレンが鳴り響き、赤色灯がマンションや住宅の陰などあちらこちらから見えている。
正門前に来ると森田が言った通り、不信な男が門を、ガチャーン、ガチャーン、と押し開けようと揺すっていた。
2人は正門横の通用ドアから外に出て、木村が不審な男に声を掛けた。
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