目覚め

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見渡した先に居間と思われる部屋があり、中に水面に腐り掛けた金魚が数匹浮かんでいる水槽が見えた。 そこに手を突っ込み洗い始める。 口の周りと薄汚れた半袖のTシャツの袖から出ている腕、それに手に付いている血液らしい赤黒い物を洗い落とし。 水槽から手を出して、しげしげと自分の腕を眺め。 左腕に歯形が付いている事に気が付き、この傷に付いて思い出そうとしているとき。 二階に通じる階段から黒猫が降りて来る、猫はゾンビに気が付くと慌てて二階に駆け戻って行く。 「五六(ごろう)…………四(よん)……あいつら…………そうだ、あいつらを学園に避難させる事が出来たのだ」 思い出そうとしていた事の1つのピースが埋まった。 もっと思い出そうと台所の椅子に座り、考えこむ。 自分以外の何かが、脳の奥深くから喰えと命令してきた。 肉、肉を思い浮かべた途端、また猛烈な吐き気が込み上げてきて、腹を手で抑え何も出てこないのに吐く。 「肉でなくて…………そうだ野菜だ、野菜が喰いたい」 彼は台所の中を探し始め、冷蔵庫の中身は当然腐っていた。 戸棚の奥にコンビーフと魚の缶詰めや、ホワイトアスパラの瓶詰めを数個見つけ、その中のホワイトアスパラの瓶詰めだけを食べ始める。 また1つのピースが思い出されていた。 「俺、野菜しか食えないのだった、でも、瓶詰めのアスパラなんて食いでが無いな、もっと野菜が食いたいな」
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