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彼はホワイトアスパラを食べ終わると、自分が今いる場所を特定するため、台所以外の家捜しを始める。
この町が、絶対思い出したくなかった記憶の奥底に留められていた、幼い頃家族と共に暮らし、家族の大半を無くした事件のあった所である事に気づかされた。
その衝撃で、彼は昔の記憶、彼にとっては絶対思いだしたく無い記憶が蘇ってくる。
「二三(ふみ)、あんた何食べたい?」
「チョット、今日は香澄、あなたの卒業祝いと就職祝いを兼ねているのだから、あなたが食べたい物にしなさいよ。
だいたいこの子に聞いたら、焼き肉としか言わないは」
そう言われた丸々太った幼稚園児位の男の子わ。
腕を交互に突き出し足を踏み鳴らして、全身で好きな物をアピールする。
「肉、肉、焼き肉、ネー焼き肉が食べたい」
「ホラ、やっぱり」
「良いじゃないのお姉ちゃん、二三だけで無く焼き肉は皆の好物なのだし」
香澄と言われた20歳前半の女性以外は、初老の男女も幼稚園児の両親も、肉好きを思わせる丸々太った体型をしていた。
二三の祖父零次(れいじ)によると、江戸時代までのご先祖様の男性は、代々雲を突く程の大男であった。
それが文明開化以降は上ではなく、横に大きくなる者しか居なくなったとの事である。
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