キース・バクスター

3/29
前へ
/32ページ
次へ
「さっき、ファーストさんって人から聞いたわよ。あんたまた喧嘩をしたようね」 「ファースト?ああ、成る程。もしかして家の前に来ていたのってピンズの親だったのか」 キースは漸く合点がついたというように手の平をぽんと叩いた。 それなら思い当たる。ピンズ・ファースト。がたいのいい少年で自分の通う学校で同じクラスだ。 性格は自己中心的で自分勝手、まさにガキ大将と言うべき人物である。 そんな彼とキースは今日確かに学校で喧嘩をした。理由は、単純。気に入らないからだ。 ピンズはキースの行動が目障りに思い、キースもまた彼の存在が気に余る。それゆえ、喧嘩をする事は一度や二度だけではない。 “また”とはそういう意味だ。 「全く!毎度毎度人様に迷惑かけて。注意される身にもなってほしいわよ」 「何言ってんだよ。挑発してきたのはあっちなんだ、俺は悪くねぇよ」 「先に手を出したのはあんたって聞いてるわよ。向こうが喧嘩を仕掛けてきたりしても先に手を出しちゃ駄目でしょ。何度も言ってるじゃない」 全く、と何度目かの溜め息を吐く母の顔には疲れが伺えた。その様子だとキースの所業は喧嘩だけではないのだろう。 「…とにかく、あんた明日、ピンズ君に謝りなさいよね。それともうすぐ夜食が出来るから降りて来なさい」 母はこの話を打ち切るように話を切り上げ、部屋を出ていった。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加