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一本道で、生ぬるい風が吹いた。
「なんか本当に口裂け女が出そう」
独り言を言う。周りを見渡すが、人はいない。何故か怖くなってきた。
「きもっ」
そう言って、歩いていくと、後ろからうめき声が聞こえた。
振り返ると、女子高生が、歩いて近づいてくる。ふらふらして、あごが上がっている。
ようく見ると、可愛いキャラクター柄のマスクをして、ミニスカートだ。そして、茶髪。
「くかかぁ・・・」
変な声を出して、私の前に立ち止まった。
「なに?もう一回言って」
私が言うと、
「きれい・・・」
女子高生は、苦しそうな声で言った。私はぞっとした。
「あなた、口唇ヘルペスじゃないの?口が人より大きいだけなんでしょ?」
恐る恐る聞く。
「くかかぁ・・・」
その女子高生の可愛いマスクの中から、血が流れてきた。
――― 私って、きれい?と、言った気がした。本物だ。本物の口裂け女に会ってしまった。
私は、悲鳴を上げると、逃げようとして、走る。しかし、恐ろしい息遣いが後ろから、迫ってきた。全力で走ったが、耳元でけたたましい大声が聞こえた。野獣の声だった。
「食う!」と。
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