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柴咲くんも私を好きだって言ってくれた。
こんな、ウジウジして情けない泣き虫を好きだって。
それなのに、どうして?
柴咲くんに言われた時よりもずっと嬉しいなんて……。
浅田くんの背中に手を回そうとしてハッとした。
さっき女の子達に言われた言葉を思い出したからだ。
『そんなんだから浅田くんから嫌われてんだよ』
そうだ。
これは、浅田くんのリップサービス。
優しい浅田くんだから私にそう言ってくれる。
本当は私の事なんてちっとも……。
私は手を前に持ってきて浅田くんを押し返した。
「嘘……つかないで下さい……っ」
「嘘じゃない!!」
「もういいです!!優しくしないで!!」
大声でそう言うと浅田くんが驚いたように黙った。
「嫌いなくせに……っ。私なんて目障りなくせに!!」
「俺、一言もそんな事言ってないだろ!?」
「浅田くんは優しいから私に直接言わないだけ!!でも周りの人は知ってます!!浅田くんが私を嫌ってる事くらい!!それを、どうして浅田くんからじゃなくて周りの人から聞かなきゃいけないんですか!?言いたいなら直接言って下さいよ!!」
「だから俺はそんな事……!!」
「またそうやって私を引き止めようとする!!本当は離したいくせに!!そんなに私が周りから色々言われてるのを見て楽しいですか!?」
「違う!!聞けよ!!」
「嫌です!!だって浅田くんも聞いてくれないじゃないですか!!」
「なんで信じてくれないの!?俺が彩乃に嘘ついた事ある!?」
「今までのが全て嘘だったらどうです!?それを真実だと信じ込んでいたら!?浅田くんは嘘をついているのに、私からしたら浅田くんは嘘をついてないことになる!!」
「なんで……っ」
「だって浅田くんも信じてくれないじゃないですか!?」
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