caramel 7

35/36
前へ
/221ページ
次へ
学校から出てしばらく走ると私は息を整える為に立ち止まった。 苦しい……。 凄く辛い……。 「浅田くん……っ」 嘘でも私を好きだって言ってくれた。 それだけは本当に嬉しい。 凄く嬉しいけど、凄く辛い。 「なんであんな嘘ついたの……?なんで……っ。こんなの、諦められない……っ」 なんて惨めなんだろう。 こんなに好きなのに叶わないなんて。 「浅田くん……っ」 名前を呼ぶだけで苦しくて、名前を呼ぶだけでどんどん好きになる。 どうしたらいいの……? どうしたら……っ。 「大丈夫ですか……?」 突然前から声をかけられてビクッとする。 ゆっくり顔を上げると、そこには見覚えのある人が立っていた。 その人も私の顔を見て目を見開く。 「彩乃……?」 「お父……さん……?」 小さい時にお母さんと離婚してしまったお父さんがそこにはいた。 お母さんが亡くなった時、来てくれなかったのに……。 お父さんの手には花束があった。 もしかして……。 「お母さんの……?」 そう言うとお父さんは申し訳なさそうに頷いた。 どうして……? お父さんとお母さんは、お互いが嫌いだから離れたんじゃないの? そう思ってから思い出した。 『どんな事があってもお父さんを憎まないで』 お母さんはいつも言ってた。 仕事が大変なのは、お父さんと別れたからでしょ? それなのにどうしてお父さんに怒らないの? ずっと思ってた。 お父さんがいたら、もっとお母さんと居られたのに。 私は、叔母さんの家になんて行かなくても良かった。 「なんで今更……っ!!」 お父さんに掴みかかるとお父さんはされるがままになった。 「お父さんがお母さんから離れたからお母さんは死んじゃったんだよ!?私は一人ぼっちになっちゃったんだよ……!?それなのに今更お母さんの墓参り!?ふざけないでよ!!」 .
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!

202人が本棚に入れています
本棚に追加