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お父さんは凄く辛そうに顔を歪めると小さな声で「ごめん……」と呟いた。
それから私の手を優しく掴むと私の目をジッと見つめた。
「彩乃。少し時間、あるかな?」
真剣なお父さんの顔。
今更話す事なんて何も無い。
だけどお父さんを恨んだり憎んだりしたら、お母さんとの約束を破る事になる。
私はゆっくり頷いた。
お父さんはホッとしたように息をつくとそのまま私の手を引いて歩き出した。
無言のまま歩き続ける私とお父さん。
たどり着いた場所は、お母さんのお墓の前だった。
お父さんは持っていた花を供えると線香をつけて両手をあわせてしゃがんだ。
「文乃。ごめんな。彩乃に話してもいいか?」
「え……?」
お父さんはお墓に笑いかけると立ち上がって私を見た。
「彩乃に話さないといけない事がある」
「何……?」
「今から話すのは、お父さんとお母さんがどうして別れたかって話しだ」
「!!」
「彩乃。お父さんとお母さんは、お互いが嫌いだから別れたわけじゃないんだよ」
その言葉から始まったお父さんとお母さんの話し。
私はただ呆然とその話を聞くことしかできなかった。
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