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誰にも祝福されずに……。
どうしてだろう。
まるで、秦と私の事を言ってるように思える。
全く違うのに……。
「そして彩乃が生まれたんだ。幸せだった。このまま何事もなく過ごせると思っていた。だけどお母さんは義姉さんにだけは認めてもらいたいと言ってて、それで何度も義姉さんの家に行っていた。そしたらだ。彩乃を連れて義姉さんの家にお母さんが行ったあとだった。突然家に知らない男の人が訪ねて来たんだ。その人はお父さんに言った。『これ以上文乃様を貶めるな』って」
「そんな……っ」
「だからお父さんはお母さんに言ったんだ。『絶対に誰からも認めてもらえるようになったらまた君を迎えに行くから。だから今は別れてほしい』って」
「お母さんは……?」
「泣きながらでも納得してくれた。だからお母さんはずっとお父さんを待っててくれたんだ。でも、過労で亡くなったって聞いて……っ」
そう言うとお父さんの目に涙が浮かんだ。
「それを聞かされたのは、お母さんが亡くなってから1年後の事だ」
「え……?」
「それも、会社の社員にね。義姉さんや、社長からは何も聞かされなかった。教えてさえくれなかったんだ。だから彩乃を迎えに行けなかった。1人にしてごめんな?」
お父さんの目から涙がこぼれ落ちる。
それは私の目からもだった。
お父さんは私とお母さんを捨てたわけじゃない。
ずっと私達の事を考えてくれていた。
だからお母さんは私に言ってたんだ。
『絶対憎まないで』って。
信じてたんだ。
また3人で暮らせるって。
「お父さん……っ」
私はお父さんに抱きついた。
私が辛かったように、お父さんもずっと苦しかったんだ。
どうして私はお父さんを信じられなかったの?
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