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「彩乃。今更遅いかもしれないけど、彩乃が良かったらお父さんと一緒に暮らさないか?」
「え……?」
「義姉さんの家は、苦しいだろ?」
お父さんが私に笑いかける。
あの家から出られる。
そう思えただけで嬉しくなった。
「いいの……?」
「もちろん。迎えに来るの遅くなったけど……」
「ううん」
お父さんに笑いかけるとお父さんも笑ってくれた。
「それにしても彩乃。どうして体操服なの?」
「!!」
そうだった。
私、学校から逃げてきたんだ。
俯くとお父さんは私の手をとった。
「言わなくていい」
「え……」
「彩乃が辛いなら、もう何もしなくていい。彩乃はずっと頑張ってくれてたから」
「お父さん……」
お父さんの手を握り返して私はゆっくり口を開いた。
「私……学校でいじめられてて……。好きな人からも嫌われて……、初めて出来た友達にも迷惑かけて……。もう、学校行きたくない……っ」
そう言うとお父さんは私の頭を撫でた。
「おいで。お父さんの家に行こう」
そう言って墓地から出ると、目の前にドラマとかでしか見た事のない黒塗りの高級車が止まった。
え?
車から出てきた男の人がお父さんに頭を下げる。
そして車のドアを開けた。
「社長。おかえりなさいませ」
「うん。あ、この子は娘の彩乃」
「これはこれは!お捜しになっていらしたお嬢様ですか!?初めまして彩乃様。私、社長の元で働かせていただいております運転手の松門(まつかど)と申します」
そう言って私に頭を下げる松門さん。
私も慌てて頭を下げた。
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