caramel 8

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メイド服を清楚に着こなした美人な女の人に案内されてたどり着いた部屋を見て再び固まる。 「今日からこちらがお嬢様のお部屋でございます」 「え!?わ、私1人ですか!?」 「はい。……何か不都合でも?」 不安そうになるメイドさんに慌てて首を振る。 「い、いえ!!ただ、ちょっと広すぎませんか……?」 どう見てもコレはリビング並の広さだ。 とても個人の部屋ではない。 「とんでもございません。お嬢様に狭いお部屋をご案内するなど、死刑に値します」 「死刑!?」 とりあえずこれ以上メイドさんを責める訳にはいかない。 私はメイドさんにお礼を言ってから部屋の扉を閉めた。 なんか……急に凄い事になっちゃったな。 誰からも認めてもらえるってお父さんは言ってた。 お父さんは、お母さんの為にここまで頑張ってきたんだ。 「私……何やってんだろ……」 学校から逃げ出して、何の努力もしないで……。 こんな私にお父さんを責める資格なんてないのに、私はお父さんを責めた。 なんて酷い奴なんだろう。 それなのにお父さんは私を助けてくれた。 『頑張ってくれてた』? それはお父さんでしょ? 不意に浮かんだ秦の笑顔。 その瞬間涙がこぼれた。 まだ、こんなにも秦が好きで……。 忘れる事なんてきっと出来ない。 私は何一つ頑張ってない。 秦を突き放したのは私だ。 そうしなきゃいけないようにしたのは自分だ。 忘れろ。 忘れる努力をしろ。 もう秦を、私なんかで縛り付けちゃいけない。 .
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