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‐秦side‐
体育祭の日から彩乃との連絡が途絶えた。
彩乃とちゃんと話がしたい。
彩乃は俺の事が『好き』だと言った。
俺だって小さい時からずっと彩乃しか見てない。
その嬉しさと同時に、俺の気持ちを信じてくれなかった悲しさが募る。
なんでこうなった?
俺はどうすればいいんだ?
悶々と考えながら朝、家を出る。
すると同時に隣の家から男の子が出てきた。
彩乃のいとこ、だっけ?
確か……
「皐月……くん?」
そう声を出すと皐月くんは俺を見た。
「あ。王子様」
男から王子様と言われるのは何だか気持ち悪い。
俺は苦笑いを浮かべた。
「あの……さ。彩乃って帰ってきてる……?」
そう聞くと皐月くんは目を見開いた。
「王子様、何も聞いてないの?」
「え?」
「あいつ、親父さん見つかったからもうココにはいないけど」
いない……?
彩乃のお父さんが見つかった?
固まる俺に『ヤバイ』という顔をする皐月くん。
「あー……。まぁ、アイツも何か考えがあるんだろうけど。王子様にも言うつもりだったとは思う。急に見つかったみたいだし」
「どこに……いるの……?」
「いや。俺もそこまでは知らない。ウチのババア、アイツの家族に興味無いし」
「そっか……」
そう言うと皐月くんは頭をかいた。
「大丈夫」
「え?」
「アイツは王子様に依存しまくってたから、王子様無しでは生活出来ねーよ。いくら離れようとしてても無理。だから大丈夫。きっとまた会える」
皐月くんはそう言うとそのまま歩き出した。
なんか、勇気出てきた。
俺は少しだけ笑って学校へ向かった。
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