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学校についてまず目に入るのはテンションの低い拓達だ。
彩乃と連絡とれないんだもんな。
しかも突然居なくなったし……。
亜季の彼女は拓達に『彩乃が他の女子に嫌な事を言われたから』だと言ったらしい。
それもあるかもしれない。
だって彩乃が言っていたから。
『浅田くんが私を嫌っている事を、どうして他の人から聞かないといけないんですか!?』
嫌ってなんかない。
むしろその逆だ。
大切で、傷つけたくなくて、他の奴と話してるだけで気が狂いそうになるのに……。
こんなにも好きな彩乃を嫌う?
有り得ないだろ。
彩乃が俺に笑いかけるだけで押し倒しそうになるのに……。
俺は鞄を机に置いてから拓達の側に行った。
「おはよう。今日も一段と暗いな」
「秦……。おはよう……」
「拓、お前寝てないだろ。目の下大変な事になってんぞ?」
「なんで秦はそんな風に笑えるの?」
拓に笑いかけると、隣から蛍にそう言われた。
俺は蛍を見て少しだけ笑った。
「無理やりだよ」
「え?」
「笑ってなきゃ、気が狂いそうになる。それに、彩乃ともう絶対会えないなんて事はないから。生きてれば必ずまた会える」
「秦……」
「俺が彩乃を追い詰めた。その事実は変わらない。これは俺に対する罰であって、皆が気にする事はないよ」
そう言うと桐原が俺を真っ直ぐ見つめて口を開いた。
「浅田くんは、何も悪くないわ」
「桐原……?」
「浅田くんと彩乃ちゃんをこうしたのは、醜い嫉妬の塊よ」
桐原は携帯に目を落とすと顔を歪めてから俺の腕を掴んだ。
「ちょうどいいわ。面白いもの見せてあげる」
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