caramel 8

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そう言って桐原が俺を連れてきたのは、あまり人の通らない三階の一番端の空き教室だった。 その空き教室の前で半泣き状態の前川を見つけた。 「ああっ!遅いよ、野々!!ってか浅田くん!?」 「しっ。少し声小さくしなさいよ。気付かれるじゃない」 桐原が空き教室を覗き込んでから俺に同じようにしろとばかりに俺を見てきた。 俺も空き教室の中を見る。 その光景を見て目を見開いた。 え……? なんで? どうして亜季の事を…… 福西が殴ってるの……? 俺の中で福西は仕事が出来て周りから信頼されている優しい女の子。 いつも笑顔で、皆が嫌な仕事も率先して引き受けるような奴だ。 そんな奴が亜季をいじめてる? 自然と動く体。 そんな俺の体を桐原が止めた。 「っ!!なんで……っ!!」 「もう少し待って浅田くん。今出ていっても福西さんがまだ弁解出来る状態よ。そんなの誰も救われないわ」 「え……?」 「ちゃんと聞いてて。彩乃ちゃんと福西さん、どっちが正しかったのか分かるから」 彩乃の名前が出てきて固まる。 そういえば彩乃、福西に嫌がらせされてるって……。 信じようとはした。 だけど信じられなかったんだ。 だって俺の知ってる福西はそんな事するような奴じゃなかったから。 彩乃にも優しかったから……。 ……本当に? 本当にそうか? 今思えば彩乃は福西が絡むと不安そうな脅えた顔をしていた気がする。 それを俺は、勘違いだとばかり……。 「邪魔な横山は消えたの。アンタもさっさと消えてよ。アンタみたいな地味な奴がいたら浅田くんの株が落ちる事くらい分かるでしょ?」 ……俺は一体今まで何を見てきたんだ? 『信じてくれなかった』 そう言って彩乃は泣いていたのに。 .
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