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「彩乃ちゃんも、僕も……。ただ、秦くんが好きなだけなのに……、どうして一緒にいちゃいけないの……?」
「は?そんなの不釣り合いだからじゃん」
「それは秦くんが決める事だよ……っ」
「優しい浅田くんが人を簡単に捨てれるわけないじゃん。だからこうして私が浅田くんの為にいらないモノを引き離してるの」
「……秦くんは、本当に優しいと思う。 1人で座ってる僕に、秦くんだけが話し掛けてくれた。『誰かと一緒にいる方が楽しいだろ』って。僕にとって秦くんは恩人なんだ。だから今度は、僕がその恩に報いる番だ。秦くんが好きなのは君なんかじゃない。自分よりも他人を優先してしまう程優しい彩乃ちゃんの事が好きだから。だから、秦くんから引き離すべきなのは君の方だよ」
「うるさい!地味な冴えないクズが!!私に一人前に説教しないでよ!!」
福西の手が振り上げられる。
ビクッとして亜季が体をすくめた。
「ごめん、桐原」
俺は桐原の手を退けて福西の手を掴んだ。
固まる福西と亜季。
亜季は涙を浮かべて俺を安心したように見上げてきた。
「俺、ずっと福西を信じてきたよ」
「あ、浅田くん……っ。これは……」
「俺は福西のせいで好きな子から引き離された。それから大事な友達も奪われそうになってる。俺のためって言ってるけど、俺はそんなの頼んだ覚えないよ」
福西の手を放して亜季を立たせる。
それから亜季に笑いかけた。
「ありがとう、亜季」
「秦くん……」
「気付いてやれなくてごめんな……」
「ううん!秦くんは悪くない!!」
亜季の肩を抱いて空き教室から出る。
そのまま福西を放置して教室へ向かった。
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