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「あのね、横山。俺は横山が好きだよ」
「っ!!」
「横山と一緒だと本当に楽しいし、そのままの俺を否定しないでいてくれる。だから横山には学校辞めてほしくない。俺はまだ横山と一緒にいたいよ」
「柴咲……くん……っ」
「ねぇ横山。横山は、まだ秦が好き?」
そう聞かれて言葉が出なかった。
まだ好きなのは好きだ。
だけど離れなきゃいけなくて、忘れないといけなくて……。
『好きだ』と肯定してしまえば戻れなくなりそうで……。
黙っていると柴咲くんが電話の向こうで軽く笑った。
「そんなの、聞くまでもないよね。だって横山はずっと秦ばっかだもん。そんなの知ってたよ。だから俺言ったじゃん。本当は伝えるつもりなんてなかったって。俺にとって横山も秦も恩人だし、大切な友達なんだから。俺は2人に幸せになってもらいたい」
「だけど……っ。私は……っ」
「周りの事なんて無視しなよ。俺が俺のままでいいって秦が言ってくれたように、横山だって同じだよ。横山の気持ちを第一に考えて」
「でも……っ」
「いい加減にしなよ、横山。俺は横山が好きだけど、秦の事も大好きなんだ。だからいくら横山でも、秦を悲しませたり傷つけるようなら俺は許せない。素直になって。横山が今会いたいのは誰?」
柴咲くんの真剣な声。
私が会いたいのは……。
そんなの、昔から変わらない。
一番最初に思い浮かぶ人はたった1人。
「会いたい……っ」
「誰に?」
「秦に……会いたい……っ」
涙がこぼれる。
嘘でもなんでもいい。
ずっと側にいてくれた事は私にとってとても嬉しかった事。
秦は我慢してたかもしれないけど、私はずっと嬉しかった。
迷惑になるって頭では分かってたけど全然離れられなかった。
「それでいいんだよ」
「柴咲くん……っ」
「横山。そこで、待ってて」
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