caramel 8

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その言葉と同時に切れる電話。 待っててって……。 ワケがわからなくて首を傾げる。 柴咲くんがここに来るのかな。 お父さんと一緒にいるみたいだし。 私は涙を拭って携帯を机に置いた。 柴咲くんに会ったらちゃんと謝らないと。 こんな私と友達になってくれたのに、何も言わずに姿を消したんだもん。 ごめんなさいって、言わないと。 どうしよう。 「なんか緊張してきた……」 胸に手を当てて深呼吸をする。 会ったらまず何を言われるんだろう。 怒られるかな? それとも泣かれるかな? ……笑ってくれたらいいな。 そう思いながら時計をみつめる。 それからしばらくした時、お父さんが帰って来た。 き、きた! ギュッと手を握り締めて部屋の中をウロウロする。 「彩乃、入るよ」 お父さんの声が扉の向こうから聞こえて背筋が伸びる。 「う、うん!!」 ドキドキしながら扉の方を向く。 ガチャッと扉が開いて見えたのは柴咲くんではなくて……。 「彩乃……」 「し……ん……?」 会いたくて仕方なかった秦がそこにはいた。 もう一度名前を呼びかけてハッとする。 違う。 『浅田くん』だ。 気軽に名前を呼んじゃいけない。 勝手に名前で呼んでたけど、もうダメなんだって……。 俯いて手を握り締めると秦が走り寄ってきて、私の事を抱き締めた。 .
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