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久しぶりに感じる、秦の匂いと体温。
「彩乃……っ。会いたかった……」
嘘でも、なんでもいい。
大好きな人から『会いたかった』と言われる事がこんなにも嬉しいなんて初めて知った。
止まったはずの涙がこぼれ落ちる。
「好き……」
「彩乃……?」
「好きだよ……っ。もう、離れたくないよ……っ」
秦の服をギュッと掴んで自然とそう言っていた。
そんな私を更にギュッと抱き締めて秦は口を開いた。
「俺、何も見えてなかった。彩乃を信じてなかったわけじゃない。だけど結果的にそうなってしまった。彩乃を傷つけて本当にごめん。俺の事信じられなくなっても仕方ないと思う。だけどコレだけは信じて。今まで彩乃に優しくしてきたのは、彩乃が好きだから好かれたくてしてた事なんだって」
「……ほん……と……?」
「うん。俺はずっと、彩乃しか見てないよ」
秦の心臓の音が聞こえる。
凄く速くて、緊張してるのが分かった。
それは『嘘じゃない』と言ってくれているみたいで……。
「俺と、付き合って下さい」
絶対に無理だと思ってた。
秦と付き合えるなんて絶対有り得ないって。
だけど……。
「……はいっ」
今、叶ったんだ。
秦が私を少し離して顔を覗き込む。
そして優しく笑った。
「やっと、繋がった」
「秦……っ」
「もう二度と『浅田くん』なんて呼ばさないから」
秦の顔が近付いてきた時、扉の方から咳払いが聞こえた。
ハッとして秦が私から離れる。
それから扉を振り向いた。
あ……。
少し寂しくて秦の服の裾を掴む。
秦は気付いていないみたいだった。
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