caramel 8

17/21
197人が本棚に入れています
本棚に追加
/221ページ
久しぶりに感じる、秦の匂いと体温。 「彩乃……っ。会いたかった……」 嘘でも、なんでもいい。 大好きな人から『会いたかった』と言われる事がこんなにも嬉しいなんて初めて知った。 止まったはずの涙がこぼれ落ちる。 「好き……」 「彩乃……?」 「好きだよ……っ。もう、離れたくないよ……っ」 秦の服をギュッと掴んで自然とそう言っていた。 そんな私を更にギュッと抱き締めて秦は口を開いた。 「俺、何も見えてなかった。彩乃を信じてなかったわけじゃない。だけど結果的にそうなってしまった。彩乃を傷つけて本当にごめん。俺の事信じられなくなっても仕方ないと思う。だけどコレだけは信じて。今まで彩乃に優しくしてきたのは、彩乃が好きだから好かれたくてしてた事なんだって」 「……ほん……と……?」 「うん。俺はずっと、彩乃しか見てないよ」 秦の心臓の音が聞こえる。 凄く速くて、緊張してるのが分かった。 それは『嘘じゃない』と言ってくれているみたいで……。 「俺と、付き合って下さい」 絶対に無理だと思ってた。 秦と付き合えるなんて絶対有り得ないって。 だけど……。 「……はいっ」 今、叶ったんだ。 秦が私を少し離して顔を覗き込む。 そして優しく笑った。 「やっと、繋がった」 「秦……っ」 「もう二度と『浅田くん』なんて呼ばさないから」 秦の顔が近付いてきた時、扉の方から咳払いが聞こえた。 ハッとして秦が私から離れる。 それから扉を振り向いた。 あ……。 少し寂しくて秦の服の裾を掴む。 秦は気付いていないみたいだった。 .
/221ページ

最初のコメントを投稿しよう!