第1章

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「はい、おまたせぇ」 キッチンから戻ってきた母のお盆には、私が手土産にこしらえてきたチョコレートタルトが乗っかっている。 父と優司は、甘い物をつまみにお酒を飲む。二人とも大の甘党なのだ。 「本当に、変な食べ合わせね。気持ち悪くならないのかしら?」 母と私はコーヒーを飲みながらケーキを食す。でも、二人は、 「酒のつまみにはしょっぱい物だなんて、誰が決めたんだ?なぁ。優司君?」 「そうですよ。それに、綾香のケーキは絶品で、何にでも合うんだから」 と、こんな調子。 まぁ、そう言われては悪い気はしないけれど。 お菓子作りは私の唯一の趣味で特技。私の料理の腕に優司は惚れたのだ。 あははは…。 笑いの耐えない食卓。両親の笑顔。愛する夫。 こんなに幸せで、いいんだろうか。
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